米国アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞した「ドライブ・マイ・カー」をはじめ「スパイの妻」、「のぼうの城」など数々の名作映画やTV-CM、PV等の企画・制作を手がけるC&Iエンタテイメント株式会社。 同社代表取締役の久保田修氏と、「ドライブ・マイ・カー」アソシエイトプロデューサーの近藤多聞氏に「ドライブ・マイ・カー」におけるJectorの活用について、お話を伺いました。
代表取締役/プロデューサー 久保田 修氏(写真左)、「ドライブ・マイ・カー」アソシエイトプロデューサー 近藤 多聞氏(写真右)
コロナ禍で海外ロケNGになる中、Jectorを活用して映像の確認・共有を実現
-「ドライブ・マイ・カー」の制作現場におけるJectorの活用方法について教えていただけますか
近藤 主な用途は、撮影した映像の確認と編集部への送信です。特に、ロケ撮影した映像の確認と共有において、Jectorは非常に有効でした。 撮影現場には、DIT(DigitalImagingTechnician)というデジタル映像管理の専門家が同行しており、彼らが現地で生データをワークという軽いデータに変換してJectorにアップロードし、これを都内の編集部でスタッフが確認、ダウンロードして編集作業を行いました。
久保田 「ドライブ・マイ・カー」は、東京、広島、北海道、韓国と舞台を転々としながら進んでいく作品であり、ロケが多く、撮影素材も多いので、データをどう管理・共有するかが課題でした。 映像部や照明部などの技術チームからは「ロケ先でどんな映像が撮れたか、なるべく早く確認したい」との要望があり、その対策としてJectorを使ってロケ先からデータを送るようにしました。 この進め方についてはチーフ助監督の渡辺さんも「狙い通りに撮れているか」「計画通り撮れているか」をほとんどタイムラグなく確認できたと、言っていました。
近藤 Jectorが一番効果を発揮したのは、海外チームとの映像のやりとりでした。 当初、韓国でロケする予定でしたが、コロナ禍で出入国が禁止され、ロケがNGになってしまったのです。 やむなく俳優さんが絡むシーンは国内の代替場所で撮影したのですが、ラストを飾る重要なシーンは釜山の絵がほしいということで、韓国チームに依頼して撮影してもらいました。 最大の問題は、現地でどんな映像が撮れたかを確認する方法でした。 通常であれば、撮影後にハードディスクを空輸や船便で送ってもらうのですが、それでは時間がかかりすぎるので、JectorとWebミーティングを活用することになりました。 韓国で撮影した映像を、弊社の会議室のモニターに映し、そこに関係者を集めて映像を確認し、OKカットをJectorにアップロードしてもらいました。 今までにない試みでしたが、海外とほぼタイムラグなしでやり取りできたことは画期的でしたね。
プロデューサーにとってJectorの最大のメリットは、公開前の映像流出を防止できること
-制作現場で感じたJectorのメリットについて教えていただけますか
近藤 マニュアルなしで直感的に使いこなせることは、大きなメリットだと思いました。 映画には多くのスタッフが関わりますし、現場は多忙なので操作が面倒なものは、いやがられるのです。 そう言う意味では、Jectorは操作方法の説明をしなくても、すぐに使いこなせたので、とても助かりました。 特に、韓国の撮影にはDITさんも同行しなかったので不安でしたが、韓国人スタッフもすぐに使いこなしてくれ、何の問題もありませんでした。
久保田 DITさんが同行しなかったということは、ワークに変換しないで韓国から生データを送ったということだね。
近藤 そうです。容量が大きい生データを、直接Jectorにアップロードしてもらいました。 大容量データのアップロードはエラーが起きやすいから、そこが心配でした。 一般的な動画共有サービスの場合、アップロード中にエラーが起きると最初からやり直さなければならないので、送信完了までスタッフがつきっきりになることもあります。 でも、Jectorはエラーが起きても、途切れたところから再開できるから安心して大容量データを送れました。 撮影後のオフライン作業も、ロケ地から直接データを送ってもらえたので撮影と並行してできたので効率的に進行することができました。
久保田 合成が多い作品の現場だと、その場で映像を確認できるJectorは、さらに有効かもしれないね。
近藤 その通りだと思います。今回の現場でも、ロケ先からスマホで映像を確認できて、すごく便利でした。
-映画制作にJectorを使うメリットがあれば教えていただけますか
久保田 プロデューサーの立場で言わせていただくと、ネットでデータをやり取りすることはセキュリティ上、問題があると感じていました。 万が一、公開前の映像が流出してしまったら死活問題ですが、動画共有サービスでデータを送る場合、メールアドレスをひとつ間違えただけで流出のリスクがあるので、危険性が高いと感じていました。
近藤 僕自身も「データはオフラインでやり取りしなければいけない」と教えられて育ったので、動画共有サービスやオンラインストレージの利用には抵抗があります。 でも、Jectorは、ID、パスワードだけではなく2段階認証もできるし、権限のある人以外は閲覧できない設定ができるので、セキュリティ面では、ほとんど問題がありません。 さらにデータをパソコンにダウンロードせず、ブラウザやアプリだけで映像を確認できるので流出リスクがないので、安心して利用できます。
久保田 演出部などはノートPCを持ち歩くことが多いから、ダウンロードできないというのは、すごく重要なポイントです。 実は以前にもノートPCを紛失したことがあり、そのときは戻ってきたからよかったのですが、もし出てこなかったら制作プロダクションとして責任問題になっていました。 現場はアクセスの良さや使い勝手重視でツールを選びがちですが、セキュリティが最重要事項ですから、それだけでもJectorを選ぶ価値があると思います。
ステークホルダーの多いテレビCMなどの制作では、さらにJectorのメリットが活きるはず
-今回、Jectorを利用した感想を教えていただけますか
近藤 「ドライブ・マイ・カー」のように海外も含め、転々とロケしながら撮影する作品の場合、タイムラグなしで映像を確認し共有できるJectorは、非常に有効だと感じました。 今回は、主にデータのやり取りで利用しましたが、Jectorにはプレビュー画面のタイムラインにマーカーやテキストでコメントできる機能もあるので、今後はそういった部分も活用して、さらに効率的に映画をつくっていきたいと思います。
久保田 逐一素材を見て指示を出したい監督もいますから、そういう現場ではJectorがとても有効だと思います。 また弊社はあまり手掛けていませんが、代理店やクライアントなど多くの関係者への確認が必要なテレビCMや広告映像の場合、Jectorのメリットがさらに活きると思います。 何百ギガのデータを都度ダウンロードする必要もありませんし、誰でも直感的に使えてブラウザやスマホでプレビューできるJectorは、CMプロダクションが求める要素を網羅しているのではないでしょうか。

C&Iエンタテインメント株式会社
映画・ドラマ等、映像の企画・制作を行う制作会社。『ジョゼと虎と魚たち』『ドライブ・マイ・カー』といった、クオリティが高く評価されている映画作品、『NANA』『のぼうの城』などのメジャー映画、「グーグーだって猫である」「重版出来!」などのテレビドラマ等、ジャンルや規模感を問わず幅広く企画立案・制作プロダクション業務を手がける。